妻の席に白い花を置いた

香るほど派手な花でなく

淡い桜色が混じった細身の花だ

 

一人で立つには厨房はすこし広い

すれ違うとき、肩がぶつかっていた頃

月のものが来る時期は味噌汁が濃くなって

指摘するときっと怒るから

ついに一度も言わなかったけれど

 

君は優しくなんてなかった

少しばかり悪戯好きで、考えていることはいつも突拍子もなくて

それでも、私にとっては淡く輝いて見えたのだ

唇を少し吊り上げて笑う、策士じみた顔だって

君でさえあれば、なんだってよかった

 

味噌汁の匂いがする

私が作った味噌汁

作り置いた味噌汁の煮え立つ味がきらいで、君は毎朝新しく作った

私は儀式めいてそれに倣う

 

メリー

 

心が空っぽに思える日は、むしろ優しい気持ちになれた

 

メリー

 

君が聞いた歌を流す

寂しくないなんて言えない

それでも生きていくなんてとても言えない

私の身体と心が、君との思い出を美しく昇華しにかかる

私が生きていくために

 

メリー

 

君はこの憂鬱な世界から早々と一抜けて、25センチの箱に納まった

 

居心地はどうだい

いずれ行く私のために、先に見てきておくれ

 

メリー

 

君がいなければ私は料理ができなかった

鈍痛を生むこの傷が、いつまでも膿んでいればいい

 

それでも

傷だらけの世界から一抜けた君に、

おめでとう。

 

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【メリー】2016/04/03