透明に満ちた胎盤から産まれたものが、やがて暗い透明たる海へ至るまで。
まず夜に。
ぬるい静かな風を吸い、一息ごとに肺が透明になる。
臍の奥、丹田が透けて緩み、背骨が折れていく。
縮む身体を支えていた皮膚は店じまい、萎れて、新しい身体を包むゲルのひさしを張り直す。
砕けた骨は布で巻いて、透明へ至る僕の手土産。
足を、耳を、声を、目を、宇宙へ還した。
透明なものだけに聞こえる音に、意識を澄ます。
気付けば水際に浸かって、心まで透明に還ろう。
こんなに優しい気持ちになるのはいつぶりか。
手土産の包みを解いて、白い骨の砂を月へと渡した。
その場所がより美しく白く輝きますよう。
僕は海へ。
水を含んで柔らかく膨らむ新しい生命は、消化器官を花と戴く、とある水母だ。
翻る身体になめらかにぶつかる水の、単一の触感。内側から泡にくすぐられる快さに愛を知り、僕は、いま全てと完全に一つになった。
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2018/5/24【絶世】