爽やかなホワイトグリーンに塗り染められた鉄橋を抜けた。

遠くに、スモークピンクのタイルが敷かれた遊歩道が見える。

 

電車の終点には巨大遊園地が待ち構えている。

実はこの電車に乗っているのは、遊園地のキャストと客だけだ。

遊園地に着けばカラフルで非現実的な衣装に身を包み笑顔になるキャストも、この電車の中では不安げな顔で顔で携帯電話を見ていることが許される。

客は抑えきれない期待を表情から隠せず、ニュースを時折確認しながらも、そこかしこで友達や家族と囁き声でお喋りを繰り返している。

 

そして電車が終点に着くと、それぞれの入り口から遊園地に吸い込まれてゆく。

キャストが広い園内の決まった立ち位置に着くと、スイッチが入ったように客が散らばり、遊園地が開幕する。

 

毎日毎日、同じことの繰り返し。

同じように客は笑い、キャストが踊る。

スモークピンクの遊歩道にはチリ一つない。

壮大なエチュードだった。

遊園地の外にまで楽しそうな空気をいっぱいに広げて、その光景は異常なものとしてニュースにされ、あるアパートにも届く。

 

遊園地のニュースのあとにアパートのテレビに流れたのは、隕石衝突まであと2日という報道だった。

世界は絶望に包まれている。

その中で、遊園地には絶えず笑い声があふれていた。

隕石衝突が予測されたのが一ヶ月前。どんな手を尽くしても破壊や軌道を逸らすことができないとわかったのが一週間前。

誰もが自分の大切な人と過ごそうとして仕事を放棄し交通と流通が完全に混乱し、自殺志願者が思いとどまり、先年の恨みを晴らすべく殺人が激増する中で、吸い込まれるように遊園地に向かう人たちがあった。

年齢も人種も性格もバラバラな彼らは、熱病に取り憑かれたような信念を持っていた。

笑いながら死ぬこと、それだけを固く誓って、目標を果たすべく遊園地へ客として向かったのだ。キャストたちも同じ熱病に感染したように、今までと同じ仕事を続けた。

遊園地の客はソフトクリームの提供が遅くてもキャストを怒鳴らなかった。キャストも今までより熱心に、明るく接客した。

隕石が落ちてきた瞬間、怒っていたり泣いていたりはしたくなかったからだ。

 

この遊園地にいる全員が連携感すら持って、幸福な雰囲気を作り出していた。

どのニュースでも、この遊園地のまるで隕石を忘れたような馬鹿騒ぎを報道したが、あと一日ともなると、空にはっきり見えるようになった隕石の生中継だけになった。

 

なすすべもなく隕石が落ちてきて、地球は宇宙空間に無音の波紋を広げ、人類は滅亡した。

わたしは隕石が落ちた瞬間、遊園地の名物である巨大観覧車が根元から折れて砂糖細工のように砕け散り、それでも遊園地にいる全員が、笑っているのを見た。

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【遊園地へ行こう】2017/2/27